第2部 第13話
 
 
 
我に返った時、
俺は裸で、俺の下には泣いている詩織がいた。

俺はその光景に呆然とした。

「詩織・・・ごめん」
「どうして謝るの?詩織、嬉しいよ?」

嬉しい?あんなに痛がってたのに?


俺はまだ詩織の中にいた。
痛がって泣く詩織に構わず貫いたところで、
ようやく目が覚めたのだ。

俺は動けず、詩織を見下ろした。

「お兄ちゃん?詩織、大丈夫だよ?もう痛くない」
「・・・」

それは本当なのだろう。
さっきまで、あれだけ「痛い、痛い」と泣いていたのに、今は平気な顔をしているのだから。

「お兄ちゃん・・・気持ち良くない?」

気持ち良くないかだって?
身体は気持ち良いさ、最高に。

でも気分は最悪だ。

俺ももっと大人なら、割り切れたかもしれない。
でも、俺はまだ14歳で、詩織は13歳で・・・

胸の中に、じわじわと罪悪感が広がった。

詩織が妹だってこともある。
だけどそれより何より、
俺のことを好きだと言ってくれているのをいいことに、
俺は好きでもない相手とこんなことをしてしまった。

詩織が「嬉しい」と言えば言うほど、
申し訳なくなる。

だって俺は、ちっとも嬉しくない。


俺は一度深呼吸をして、詩織の中から出ようと腰を少し引いた。
すると、詩織が「あっ・・・」と小さく喘いだ。

「・・・気持ちいい」
「嘘付け。そんな訳ないだろ」
「本当だよ。詩織、お兄ちゃんのこと好きだから。だから、気持ちいいの」
「・・・」
「お願い。やめないで」
「・・・」

詩織が懇願するような目で俺を見上げる。
俺は無意識のうちに腰を動かし始めた。

「あん、あん・・・ああ、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・幸せ・・・」

詩織が「お兄ちゃん」という言葉を発するたびに、
俺の心は急速に冷めて行く。
でもそれと反比例するかのように、身体は昂ぶって行った。

詩織がポロポロと涙を流した。
でもその表情から、それが苦痛の涙じゃないことはすぐにわかる。

「あっ・・・あああ!気持ちいい・・・気持ちいいよぉ・・・!」

詩織の中が、キュッと収縮する。

その感触と詩織の声で、俺も一気にのぼりつめた。




赤い鮮血のついたシーツを、俺は成す術なく見つめた。


ああ。本当にやっちゃったんだ、俺。


この血は間違いなく詩織の血だけど、
俺の血なんじゃないかと思うくらい、胸が痛い。

「シーツ・・・なんとかしなきゃね」

詩織はしばらくベッドの上で余韻に浸るかのようにうっとりした表情を浮かべていたけど、
さすがは女。
一度夢から覚めると、テキパキとベッドからシーツをはがし、1階の洗面台へ持って行った。

そして俺の部屋に戻ってきた時には、
そのシーツからは綺麗に血は取り除かれていた。

濡れたシーツは夏の潮風であっという間に乾いた。

シーツをベッドに敷くと、
部屋の中はまるで1時間前に戻ったかのようだ。
何事もなかった、1時間前に。

でも、時間は巻き戻せない。

俺は詩織を、妹を、抱いてしまった。






その翌日。
詩織はまた俺の部屋にやってきた。
ちゃんと母さんがいない時間帯を狙って。

「もう絶対しない」
「どうして?一度すれば、同じじゃない」
「同じじゃない」

そう。
もう絶対にしない。

昨日の夜、俺がどれだけ後悔したと思ってるんだ。

誤解を恐れず言うならば、俺は襲われたようなもんだ。
・・・違う。
やっぱり、俺の意思が弱かったんだ。

「詩織はお兄ちゃんが好きだから、お兄ちゃんとしたいの。お兄ちゃんは詩織のこと嫌い?」
「・・・嫌い、じゃない」
「だったら、いいでしょ?」
「よくない」
「どうして?」
「俺と詩織は兄妹だろ」
「本当の兄妹じゃないじゃない。もし本当の兄妹だとしても、妹がいいって言ってるんだから、
いいじゃない」
「・・・」
「お兄ちゃんが、生理的に詩織を受け付けないなら仕方ないけど・・・
そうじゃないよね?昨日、抱いてくれたもんね」

女って恐い。

今日は絶対ベッドに寝たりしないぞ、
と覚悟を決めて俺は床に足を踏ん張った。

詩織が俺に抱きついてくる。
それを引き離そうとすると、詩織が俺の股間に手を伸ばし、そっと摩った。

「なっ、や、やめっ」
「・・・したそう」
「違う!これは生理現象!」

詩織は構わず跪き、
俺のズボンを下ろした。

そして俺を口に含む。

俺はよろけて、勉強机にもたれかかった。


な、なんだ、これ。


俺の前で膝をついて、俺を咥えてる詩織の姿は、
エロいどころの騒ぎじゃない。

やべっ

と言う間もなく、俺は達した。


「・・・っ。・・・うわ、詩織!ごめん!」

だけど詩織は口の中の物を飲み込んだ。

「し、詩織!!」
「だい、じょうぶ。平気」

平気な訳ないだろ!!!!
あんなもん、口に入れるのを想像するだけで吐き気がする!!!

「詩織・・・」
「ほんとに大丈夫。お兄ちゃんのだもん」

詩織はそう言うと、俺を見上げてニコッと笑った。


・・・こいつ、本当に俺のこと好きなんだ。
昨日は、単なる憧れみたいなもんと、ヤることへの好奇心かと思ったけど・・・



俺はため息をついて、床にしゃがみこんだ。
目の前では詩織が相変わらずニコニコしている。
本当は、吐きたいくらい気持ち悪いだろうに。

「・・・わかったよ」
「え?」
「この夏だけだからな」
「え?」
「この夏だけ、詩織と付き合う。詩織がしたいようにすればいい」
「お兄ちゃん・・・」


詩織は涙を流しながら「ありがとう」と言った。
 
 
 
  
 
 
 
 
 ↓ネット小説ランキングです。投票していただけると励みになります。 
 
banner 
 
 

inserted by FC2 system