第2部 第3話
 
 
 
一瞬、俺の頭の中で理性と本能が激しいバトルを繰り広げたが、
あっと言う間に決着はつき、
理性は白旗を掲げてすたこらさっさと逃げ出した。

「よし。本能の勝ち」
「へ?」
「いえ、こっちの話です」

俺は先輩の顔から眼鏡を外した。
先輩がキョトンとした顔で、焦点を合わすかのように目をパチパチとさせる。

・・・かわいいなあ。

先輩は、美人だとかすごくかわいいというタイプじゃない。
どちらかと言えば、地味で目立たないし、
真面目でツンとした印象なので、近寄り難い。

でも、よくよく話してみると、
ごく普通の18歳の女の人だ。

しかも、しっかり者のくせして、妙に鈍感だったり世間知らずだったり。

そんな先輩が時折見せる無防備な表情は、たまらなくかわいらしい。


俺が思わず微笑むと、先輩の顔がまたポッと赤くなった。

「な、何よ。どうして眼鏡、外すのよ」
「いや、邪魔かな、と思って」
「邪魔じゃないわよ。見えないんだから、返して」
「見えないような距離じゃないでしょう」

ますます先輩の顔が赤くなる。

俺は構わず先輩をまた抱き寄せ・・・いや、どちらかというと今度は抱きつき、
そのままゆっくり床に倒れた。

俺の下で、先輩の息が止まる。

・・・本当に死にますよ?

あれ。それにしても先輩、もしかして・・・

やばいなぁ。

「は、は、はな、し、」
「え?」
「離し、て・・・」

先輩がか細い声で言う。

「本当に嫌なら離しますけど」
「・・・湊君、なんか余裕ね」

急に先輩の声が鋭くなる。

「全然余裕じゃありませんよ?」
「・・・」
「なんですか、その『遊んでるなコイツ』的な視線は」
「・・・」
「俺、ずっと春美さんに片思いしてたから、遊んだりなんかしてませんて」
「!!!」

俺の下から逃げようとする先輩を押しとどめて、
無理矢理キスをする。
先輩も最初は抵抗してたけど、諦めたのか力を抜いた。

先輩は、緊張したらずっと緊張しぱなしだ。
こうやって一度噴火した方が、早く落ち着く。

俺は唇を離し、今度は少し口を開いて、
先輩の唇を食べるようにキスをした。
先輩はどうしていいかわからないのか、なされるがままだ。

でも、俺だってどうしたらいいかなんてわからない。
こんなの、初めてだ。
そう、こんなのは。

ふと蘇った苦い記憶を強引に頭から追い出し、
右手を先輩の左胸の上にそっと置いた。

柔らかい感触の下から、早い鼓動が響いてくる。

その時、先輩もようやくそのことに気付いたらしい。

「あっ。わ、私・・・」
「下着、付けてないんですね。やらしいなー」
「!!!パ、パジャマだから・・・!パーカー羽織ってるし!」
「こんな格好で夜、出歩いちゃダメですよ。男に襲われたらどうするんですか」
「・・・そうね」

「あんたはどうなのよ」という視線は無視し、
俺は先輩の肩に顔を埋め、右手を少し動かした。

すぐさま先輩は口を噤み、身体を強張らせる。

あーあ。先輩をリラックスさせようとしてきた俺の努力が台無しだ。

でも、俺もいい加減先輩に気を使っている余裕がなくなってきた。

先輩のパジャマについた少し大きめのボタンを上から全部外す。
本当は必要なとこだけ外せばいいんだけど、自分をちょっと落ち着かせるために、
わざと手間をかけてみた。

だけどパジャマの下の白いキャミソールと、そこにうっすらと浮かび上がっている胸の形を見たとき、
やっぱり手間は惜しむモンじゃない、と実感した。

が、ここに来て、俺は手を止めた。

「本当に、嫌じゃないですか?」
「・・・」
「そんな、何を今更って顔、しないでくださいよ」

確かに、「今更」だけど、ちゃんと確認しておきたい。
こういうことは、自分も相手も幸せじゃなきゃ、本当に幸せだとは言えない。

そう、幸せとは言えないんだ。

先輩は、俺から目を逸らして言った。

「・・・私、自分がこの歳でこんなところでこんなことするなんて、夢にも思わなかった」
「『こんなことするなんて』ってことは、
先輩としてはもう了解済みで『こんなことしてる』ってことですね?」
「・・・」
「へへへ」
「・・・何よ」

俺は先輩の不機嫌な声を聞きながら、白いキャミソールの上に顔を落とした。
また先輩の息が止まる。

でも、本当にもう余裕がない。

キャミソールの上から胸の先端を鼻でくすぐり、そっと口で触れると、
先輩が「あっ」と息を吸う。
そしてまた息を止めた。

顔はそのままに、手でもう片方の胸に触れる。
親指と人差し指で軽く先端を摘んだり転がしたりしているうちに、
少しずつそこが尖っていくのがわかった。

「み、湊、君・・・」
「何ですか?」
「やめて・・・」
「さっき、そう言わなかったじゃないですか。もう聞きませんよ」
「そんな・・・」

ていうか、もうやめれない。
ごめんね、先輩。

心の中で謝りつつ、キャミソールを一気にたくし上げると、
驚くほど白く艶やかな肌と、綺麗な胸が目に飛び込んできた。

「すげえ・・・綺麗」
「何言って、あっ・・・」

俺は先輩の胸に顔を押し当てた。
柔らかくて温かくて・・・気持ちいい。

胸の奥から沸々と幸福感が沸いてくる。

「先輩。俺、凄く幸せです」
「もう・・・相変わらず素直なんだから・・・」
「先輩は?」
「・・・うん、幸せ」

よかった。

手を先輩の身体にそわせて、ショーツの中に滑り込ませると、
確かに先輩が、幸せ、と思っている証拠を指先に感じた。

「ああ、やぁ・・・」

先輩の口から、聞いたことのないような艶っぽい声が漏れる。

普段色気とは無縁の人なのに、
いや、無縁の人だからこそ、
余計に色っぽく感じて背中がゾクゾクする。

もっとそんな声が聞きたくて、執拗に指を動かした。

「・・・んっ、や」

先輩が俺の肩を掴み、胸に顔を埋めて声を堪える。
でも俺は強引に先輩を引き離し、
ついでに先輩の両手首を片手で握り、口を塞げないようにした。

「先輩。我慢しないで」

先輩は唇をキュッと閉じ、涙目で首を横に振る。

「声、聞きたい」
「いや・・・そんな・・・恥ずかしい」

でも俺が再び指を動かし始めると、たちまち先輩の口から声がこぼれた。

「ふっ・・・ん、ああ・・・や・・・やぁ・・・」
「先輩・・・」
「や、やだ・・・湊君、ああ、やめて・・・もう・・・」

先輩の潤んだ目に耐えられず、俺は先輩の足からズボンとショーツを引き抜いた。
俺もパッと服を脱ぐ。
でも、Tシャツを脱ぐ間も惜しくて、すぐに先輩の上に戻った。

先輩はもはや恥ずかしがる気力もないのか、
激しく胸を上下させて酸素を身体に取り込んでいる。

先輩の足を割り、腰を進める。

「み、湊君?」
「先輩・・・好きです」

俺が目を見てそう言うと、先輩は安心したように息をつき、
目を瞑った。
 
 
 
  
 
 
 
 
 ↓ネット小説ランキングです。投票していただけると励みになります。 
 
banner 
 
 

inserted by FC2 system