第14話 奈々
 
 
 
「し、信じられない・・・!!!!」

青筋って本当に立つんだなあ。

「三浦、飯島さんにそんなこと言ったの!?なに、あいつ、何なの!?何様のつもり!?」

王子様、かなあ?

「二重人格どころの騒ぎじゃないじゃない!!ジギルとハイドよ!!」

それってつまり、二重人格ってことじゃないのかなあ。

「これからは、あいつの事、『裏・三浦』って呼んでやる!」

ウラミウラ・・・語呂悪いなあ。

「ちょっと、飯島さん!!聞いてる!?」
「え?はい?あ、うん。聞いてるよ、一応」

確かに聞いてたけど。

私が三浦君に何を言われたかを知って、激怒する高山さん。
面白すぎる。

そんな青筋立てて怒らなくても。

「怒るわよ!しかも、そんな三浦をまだ好きって言う飯島さんにも腹が立つ!」
「・・・そんなこと言わないでよ」
「もっといい男の子なんてたくさんいるわよ!遠藤君なんてどう!?」
「え。遠藤君?ちょっと苦手かも・・・溝口君は話しやすいけど」
「み、溝口・・・クン?」

三浦君と仲の良い遠藤君と溝口君。
その繋がりで溝口君の名前を出しただけなんだけど、
高山さんは何故か激しく動揺した。

「そう、ね。溝口君はいい人だと思うよ・・・。うん、飯島さん、溝口君にしといたら?」
「でも、溝口君、好きな人いるし」

あ!
そういえば、前、高山さんも片思いしてる言ってたけど、それってもしかして!

「高山さんの好きな人って、溝口君?」
「・・・」
「・・・っぷ」
「・・・何よ?」

高山さんが真っ赤な顔でジロッと私を睨む。

「ううん。それはまた・・・望みのない片思いをしてるね」
「飯島さんに言われたくないんだけど」
「・・・それもそうね。あ、そうだ」
「何?」
「ねえ、高山さん。お願いがあるんだけど・・・私とお友達になってくれない?
望みのない片思いをしている者同士。あ、もちろん、最初は普通のお友達からだけど」

私がそう言うと高山さんは怪訝な顔をした。

「普通のお友達から、って・・・飯島さん、私と恋人同士になりたいの?」
「まさか!」
「てゆーか、私、飯島さんは友達だと思ってたんだけど」
「・・・え?そうなの?私って、高山さんの友達なの?」

私、いつの間に高山さんの友達になってたんだろう??

高山さんは大きくため息をついた。

「飯島さんの『友達の基準』って何なの?」
「え?えーと・・・名前で呼び合う、とか、かな?」
「わかった。これから飯島さんのことは『雛子』って呼ぶね。私のことは『奈々』でいいわ」
「ほんと!?ありがとう!これで私と高山さん、じゃなかった、奈々はお友達ね!」

高山さんはまたため息をついた。






「私、高山奈々ちゃんとお友達になったの!」

帰りの電車の中、胸を張って溝口君にそう言うと、
溝口君も、さっきの奈々のように怪訝な表情をした。

「・・・だから?」
「私に友達ができたの!」
「・・・それはよかったな」
「どうして喜んでくれないの?」
「いや・・・めでたいな」

イマイチな反応の溝口君。
どうしてだろう。

「どうしてって・・・友達ができてそんなに嬉しい?」
「嬉しい!特に今は」
「・・・そっか。そうだな」

溝口君は少し納得したように、微笑んだ。

「なんかね、奈々とは凄く仲良くなれそうな気がするの。ピピッと来たの」
「恋人みたいだな」
「うん。男の子だったら好きになってたかも」

二重人格じゃないしね。

「奈々ってとってもいい子よ。ちょっと口は悪いけど」
「ふーん」
「そう思わない?」
「思うも何も、俺、高山と話したことないし」
「そうなの?」

じゃあ、どうして奈々は溝口君のことを好きになったんだろう。
私みたいに一目惚れしたのかな?

「いつか奈々と一緒にデートしてみたいなあ・・・」
「やっぱり高山と恋人同士になりたいのか」
「そういう意味じゃなくって。私と奈々にそれぞれ彼氏ができて、
4人で一緒にデートがしたいってこと」
「ああ、そういうことか」

奈々の相手は溝口君だったらいいのにな。
そしたら私も気楽だ。

私の相手は・・・誰なんだろう。
三浦君のことは好きだけど、さすがにそれは望めない。

「溝口君。私と一緒に失恋しようよ」
「もうしただろ」
「諦めよう、ってこと。一緒に新たな恋を探そうよ!」
「・・・なんだ、飯島。やけに積極的だな。なんか気持ち悪いぞ」



 
 
 
 
 
 
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