第4話 女の子たち
 
 
 
高校生になって3ヶ月ちょっと。

最初の頃は、いかにも「中学出たてです!」って感じだった1年生も、
みんな高校生っぽくなってきた。

特に女の子。

みんなメイクに目覚めて、お昼ご飯の後はこぞってトイレでメイク直ししてる。
望ちゃんも例外じゃない。

でも・・・私は例外。

すっぴんだし、耳くらいの長さのボブも櫛でといただけ。
望ちゃんに「眉毛くらい整えなよ」と言われて眉毛カットだけはたまにするけど、
やってもやらなくても変わらない。
髪がまとわりつくのが嫌でリップやグロスもしない。

だからお昼ご飯の後、望ちゃんがメイク直ししてる時は暇だ。
トイレの中は混んでるし・・・先に一人で教室に戻ってようかな。

そう思いトイレから出ると、
少し離れたところに三浦君が立っていた。

・・・一人じゃない。
女の子と一緒だ。
私みたいにすっぴんだし、髪も真っ黒。
でも私と違うのは、凄く美人ってことだ。
背も高くってスラッとしてて、長くて綺麗な髪が艶々と輝いている。

あれは確か、3組の月島(つきしま)さんって女の子。
入学式の日に、新入生代表で挨拶をした入試1位の才女だ。

才色兼備って彼女のような人のことを言うんだろう。
私とは正反対。

そうだ、三浦君もかっこよくて頭もいいから才色兼備だ。

なんてお似合いな2人なんだろう。


月島さんは、三浦君が手に持っている教科書を指差しながら何か話している。
三浦君は「うんうん」と言う感じで頷く。
どうやら三浦君が月島さんに何か勉強のことで質問しているらしい。

「あー。そういうことか!わかった。ありがとうな、月島」

三浦君はいつものキラキラした笑顔。
遠目にも眩しいくらい。

「どういたしまして」

月島さんはクールビューティな笑顔で三浦君にそう言うと、
3組の教室の方へ歩いて行った。

姿勢が良くって歩き方も上品。
彼女の周りだけ、なんか空気が違う。

月島さんとああやって気軽に話せる男の子なんて、三浦君くらいだろう。


三浦君を見ると、月島さんの後姿を目で追っている。
・・・もしかして三浦君、月島さんのこと好きなのかな・・・

そうだよね、あんなに素敵な人だもんね。

そうは思っても、胸がざわめき、苦しくなった。



私も月島さんの方を見る。

月島さんはちょうど3組から出てきた女の子と、教室の入り口でおしゃべりしている。
さっき三浦君に見せたクールビューティな笑顔じゃなくて、もっと砕けた感じの笑顔の月島さん。
あんな風にも笑うんだ。
きっと、一緒におしゃべりしている女の子は、月島さんの親友なんだろう。

2人は手を振って別れると、月島さんは教室の中へ、もう一人の女の子は私の方へ向かって歩いてきた。
トイレに入るのかな、と思ったけど、その女の子は三浦君の前も私の前も通り過ぎると、
階段を下りて行った。

私はなんとなくその子から目が離せなかった。

1年生にはかわいい女の子はたくさんいる。
月島さんも美人だし、
月島さんと同じ3組の藍原(あいはら)さんって言う子なんか、アイドル並みのかわいさで、
遠藤君はじめ、たくさんの男の子が熱を上げている。

今私の前を通り過ぎた女の子は、西田さんと言う子だ。
西田さんは月島さんのように美人、ってわけじゃないし、
藍原さんのようにすごくかわいい、ってわけでもない。

だけど、何故か目を引く女の子なのだ。

小さくて(私よりは大きいけど)、元気で、いつもニコニコしていて・・・
なんとなく全体的に「かわいい雰囲気」なのだ。
でも男の子に媚びたりすることがなくって、女の子から人気がある。

だから私も思わず目で追っちゃったんだけど・・・


西田さんの姿が見えなくなって、私はもう一度三浦君の方を見た、

と。
三浦君と目が合った。


―――違う。

三浦君は私と同じ方向を見てたのだ。
だから私が三浦君の方を見たとき、目が合ったのかと思った。

三浦君、
西田さんを見てたんだ。


その三浦君の表情は今までに見たことがない物だった。

少しぼんやりとしていて、それでいて切なげで・・・


三浦君はいつまでも西田さんが歩いていった方向を見ていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
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