第4話 健次郎 「変態」
 
 
 
あーあ。面白くない。

俺は手を頭の後ろで組み、
椅子をギシギシと揺らした。

授業中の国語教師が嫌そうな顔をして俺を睨んだけど、
そんなのはお構いなしだ。

この学校、生徒は金持ちばっかりだけど、教師は庶民なんだよな。
せっかくセレブな学校なのに、教師がこれじゃあ台無しだ。
ま、金持ちなら教師なんてしないか。

・・・そういえば、本城の兄貴も教師だって聞いたことがある。

俺は、前の方の席に座っている本城を見た。
萌加の「ペット」だ。

萌加の奴、なんだってあんな貧乏人の世話してんだか。
いや、貧乏人だから世話してんのか。

でも、あんなのに金を使うなんてただの浪費だ。
どうせなら、俺と付き合って金を使う方がよっぽど友好的だろ。
あれ、友好的?有効的?
ま、いーや。


萌加はモテる。
とにかく美人だし、プライドが高いくせに優しかったりもする。
だけど何故だか男とは無縁。

自分より貧乏な男とは付き合えないってか?

それならやっぱり俺や龍聖くらいしか釣り合う男はいないだろ。
何を勿体ぶってんだか、俺がいくら「付き合ってみねー?」と言っても、
「興味ない」の一点張り。

実はレズとか?
ナツミを狙ってるとか?

いやいや、そんな訳ねーだろ。
俺の周りにそんな変態、いる訳ない。


・・・いや、一人いる。

他でもない、本城だ。
女から毎日毎日食いモンなんか恵んでもらって恥ずかしくないのか?
男としてのプライドないのか?
ただのドMなのか?

俺なら、どんなに腹がすいても、あんな風に憐れまれるのだけはゴメンだ。
それなら餓死してやる。

・・・まあ、萌加からの食いモンなら食ってやってもいいけど。

って、おい。
まさか、本城の奴、萌加に気があるとか?
だから、萌加が持ってきた食いモンを、恥ずかしがることなく食えんのか?


おいおい。
マジかよ?
本城なんかが萌加と釣り合う訳ないだろ?


俺は本城から視線を外し、萌加を見た。
萌加も俺に負けず劣らず、授業を聞いていない。
いや、俺や萌加だけじゃない。
授業なんて誰も聞いてない。
だって、聞くだけ無駄だもんな。
俺達の将来は決まっている。
親の後を継いで、金持ちになるんだ。

だから、勉強なんて必要ない。
必要なのは、本城みたいな貧乏人だけだ。
現に、本城の親が何してんのか知らないけど、本城の兄貴は教師なんて庶民的な仕事してるし。



それにしても・・・面白くない。
萌加の「餌付け」は、もう2年近く続いてる。
よくもまあ飽きずにそんなことできるもんだ。

さすがに高校生になったし、もうやめるかと思ったけど、
萌加は当たり前のようにこの4月になっても「餌付け」を続けている。

このままだと高校卒業まで続きそうな勢いだ。
本城が萌加に惚れているなら、そんなことしなくても萌加は本城を「ペット」にし続けられるのに。

そうか。
そうだよな。

よし、今度萌加に忠告してやろう。



 
 
 
 
 
 
 ↓ネット小説ランキングです。投票していただけると励みになります。 
 
banner 
 
 

inserted by FC2 system