第3部 第19話
 
 
 
門の前で車が止まった。
家の前ではなく、門の前で。

「どうしたの?家の前まで行ってよ」

門から家までも結構あるんだから。
スーツケースを転がしながら歩くのはいくらなんでも大変よ?

私が運転手にそう言うと、
運転手が黙って私の隣の窓を開けた。

すると、門の前に懐かしい姿が。

「師匠!」
「おう、おかえり。どうだった、グアムは」
「来てくれたんだ!」
「マユミがグアム行く前に『土曜に帰ってくるからうちに来てね』って言ったんだろ」

そうでした。

運転手がニコニコしながら、後部座席のドアを開き、
師匠を招き入れる。

そう言えばこの運転手。
クリスマスに師匠が車の中で私にキスしてきた時運転してた人だ。

・・・は、恥ずかしい!

私は敢えて運転手の視線は無視し、
隣に座った師匠に夢中で話しかけた。

「来てくれてありがとう!お土産買ってきたよ!」
「うん。何買ってきてくれたんだ?」
「温泉の元」

師匠の顔が歪む。

「そう言えば、修学旅行の北欧土産に寺脇から同じモン貰ったな」
「お姉ちゃんのことだから、メイド・イン・ジャパンだったとか」
「いや。メイド・イン・チャイナだった」

お、おしい!
ような、全然おしくないような。

運転手が必死で笑いを堪える。

「大丈夫よ。私のはちゃんとメイド・イン・USAだから」
「・・・アリガトウ」

まだ微妙な表情の師匠。

これでも悩んだのよ?
だってグアムのお土産なんて、日本のスーパーで売ってるような物ばかりなんだもん。

だから、温泉好きの師匠にはやっぱりコレかなと思って。
(グアムに温泉があるのかは知らないけど)

もしかしたら、お姉ちゃんも散々悩んだ挙句、
師匠に温泉の元を買ったのかな?
メイド・イン・チャイナなのがおしいところだけど。

「後、チョコレートもたくさん買ってきたよ」
「たくさん?」
「うん。オウチの人達と食べてね」

私が「オウチ」を強調すると、
師匠がちょっと私を伺うような目で見た。


マユミ、知ってんのか?


だけど私はそれ以上変な素振りは見せなかった。
実は、グアムの湯につかりながらチョコレートを食べているヤクザさん達を想像して、
吹き出しそうになっていたんだけど。





私の部屋に入ると、
「うーん。グアムの香り」と訳のわからないことを言いながら、
師匠がキスして来た。

「焼けたなー」
「日焼け止め塗って頑張ったんだけどね。グアムの日差しにはアネッサも敵わなかったみたい」
「あはは」

海外リゾート帰りらしく、コートの下はかなり薄着な私を見て、
師匠がモソモソしだした。

おお。
久しぶりだな、この感じ。

条件反射で拒みそうになったけど、
ぐっと堪える。

だけど、師匠はすぐに止まり、私から離れた。

「抵抗してくれないと、気分が盛り上がらないんだけど」
「・・・何それ。師匠ってS?」
「どう見てもそうだろ」

確かに。

思い直したのか、師匠は笑ってスーツケースのベルトを外した。
その瞬間、ボン!と言ってスーツケースがビックリ箱のように開く。

「うわ!なんだ、これ!どんだけ詰め込んでるんだよ!」
「だって。ほら、これがパパとママへのお土産でしょ?これがお姉ちゃん夫婦で、これが・・・」
「ああ。寺脇、ついに結婚したんだ?」
「そう!そうなの!」

私は目を輝かせてスーツケースから顔を上げた。

「お姉ちゃん今、旦那さんと一緒にアメリカに行ってるんだ。
で、春休み明けにお姉ちゃんだけ帰ってくるの。
・・・そっか、お姉ちゃん今頃初夜やってるのかなあ」
「はあ!?」

師匠が、「お土産は温泉の元」と聞いた時以上に変な顔になる。

「ショヤって初夜?本物の?」
「そうらしいの」
「・・・うーん。寺脇が凄いのか、男が凄いのか。俺、絶対耐えられない」

でしょうね。

師匠は怪訝な顔つきのまま、腕を組んで床に座った。

「そうか・・・寺脇が・・・なんか、娘を男に取られた気分だな」
「あはは。なるほど」
「でも、寺脇のことだから『できなかった!』とか言いながら半泣きで帰ってきそうだな」
「まさか」

まさか、まさか。
・・・まさか、ねえ?
いくらお姉ちゃんでも・・・


「お。下着発見」

師匠が勝手にスーツケースを漁り、私のブラを見つけると、
その紐に指を通してクルクルと回した。

って、はあ!?

「な、何してるのよ!」
「え?なんで怒る?」
「怒るに決まってるでしょ!!!」

私が師匠の手からブラをひったくると、
師匠が「得たり」という感じでニンマリと笑った。

「そうそう。マユミはこうでなくっちゃ」
「こうってどう!?」
「怒ってカリカリしてる方がマユミらしい。襲い甲斐がある」

こ、このエロ師匠!!!!

今度は怒りに任せて本気で抵抗したけど、
それが師匠のS魂に火をつけたらしい。

あっと言う間にベッドに押し倒され、
あれよあれよと言う間に服を脱がされる。

気分はリカちゃん人形だ。

あれ。
そう言えば、裸を見られるのって初めてじゃない?

慌てて掛け布団を引き上げようとしたけど、
掛け布団と私の間に師匠が滑り込む。

「師匠、どいてくれない?掛け布団の意味がないんですけど」
「俺が寒くないようにって気遣ってくれてるんだろ?
その気遣いはありがたいけど、今から汗かくから心配無用だ」
「・・・」


そして結局師匠の言う通り、
その後すぐに2人とも汗をかく羽目になった。


・・・頑張ってね、お姉ちゃん。

  
 
 
 
 
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