第1部 第7話
 
 
 
2人は、まさか誰かに見られているとは思っていないのか、
夢中でキスしている。

誰だろう・・・
2人とも高等部の制服を着ている。
生徒数が少ない学校だから、顔くらいは知っているはずだ。
でも、わからない。

離れているから顔が見えないわけじゃない。
顔は2人ともはっきり見えている。
でも、わからない。

2人から発せられている・・・フェロモン?とでも言うのだろうか、
それが2人を「男子生徒と女子生徒」ではなく「男と女」にしている。
だから仮に私のよく知る2人だとしても、別人のように感じるのかもしれない。


2人のキスは次第に激しさを増していった。

ダメ。
これ以上、見ちゃいけない。

わかっているけど、私は何故か目が離せなかった。


男子生徒の右手が、女子生徒のブレザーの中に入る。
そしてその手が上から下に、ところどころ止まりながら下りる。

ブラウスのボタンを外してるのかな・・・

一番下まで行った手が、女子生徒の身体の真ん中より少し上に戻った。
その拍子に2人の立ち位置が少し変わり、女子生徒の身体がまともに私の方を向く。
一瞬、気付かれるかと思ったけど、キスに夢中で私なんか目に入らないみたいだ。

男子生徒が少し身体をずらすと、女子生徒の白い肌が露になった。
辺りが暗いからなのか、女子生徒が色白だからなのかは分からないけど、
その肌の白さは眩いばかりで、そこだけ輝いているようだ。

さっき私が見た白っぽい物は、女子生徒の顔か足だったのかもしれない。


女子生徒はブラウスの下にキャミなんかは着ておらず、
すぐにピンク色のブラジャーが目に飛び込んできた。

男子生徒がキスしたまま、ブラの上から胸を触る・・・
こういう時、なんて表現したらいいのだろう。
触る、じゃない気がする。

揉む、って感じでもないし・・・

勉強はできるくせに、こういうことになるとまるで頭が働かない。

とにかく、男子生徒は手いっぱいで胸を揉んだり、
親指で胸の先端だけグリグリと押したりしている。


見なかったことにしよう。
寮に戻らなきゃ。

でも私は、まるで覗き見をしているかのように、息を殺して2人を見つめ続けた。


男子生徒の手がブラをグイッと押し上げ、
とたんに形のいい綺麗な胸がブラからこぼれ落ちる。

2人はようやくキスをやめ、男子生徒はそのまま女子生徒の胸に吸い付いた。
もう片方の胸には手をあて、さっきよりも激しく動かす。


あっ・・・


え?何?

私は耳を澄ませた。
何か、聞こえた気がする。

だけど、神経を集中させればさせるほど、自分の呼吸や心臓の音、
更には血液の流れる音さえ、うるさいほど耳につく。


「あ、やぁ・・・」

今度ははっきりと聞こえた。
あの女子生徒の声だ。

「ん、ああ、気持ちいいー・・・ああん」

その喘ぎ声は、まるで夜風に乗って私の耳に届いているかのようだ。

なんて色っぽい声なんだろう。
私と同じ歳くらいの女の子の声とは思えない。


身体の芯が熱くなる。
どうしたんだろう、私・・・


男子生徒は、空いているもう片方の手を、女子生徒のスカートの中に入れた。
女子生徒は恥らうように足を閉じたけど、
男子生徒の手が激しく動き出すと、それを受け入れるかのように、
自ら足を開いた。

「ぁ、あああ!やぁ!」

急に女子生徒の声が大きくなる。
私はビクッとして、思わず両手で胸を押さえた。

男子生徒が胸から口を離し、耳元で何か囁くと、
女子生徒はふるふると、首を振った。
でも、もう一度男子生徒が何か言うと、今度は小さく頷いた。

すると男子生徒はパッと女子生徒から手を離した。


あれ?やめるのかな?
ホッとしたような・・・なんだろう・・・なんか、変な気分。


そう思ってたら。

男子生徒はカチャカチャと自分のズボンのベルトを外し始めた。
そして、ズボンを下ろして・・・


ダ、ダメ!
限界!!
もう見てられない!!!


私は身を翻し、逃げるようにしてその場から走り去った。






「あ。亜希子さん、おかえりなさーい」

寮の部屋に飛び込むと、ベッドの上で寝そべって本を読んでいた春美ちゃんが顔を上げた。

「た、ただいま・・・」
「遅かったですね。あ、金曜はバイトでしたっけ」
「う、ん」

春美ちゃんがベッドから下りる。
ショートパンツから出た長くて綺麗な足が、さっきの女子生徒の足とダブって見え、
思わず目を逸らした。

「亜希子さん?」
「な、な、何!?」
「?どうしたんですか?変ですよ?」
「そ、そう?やだわぁ、疲れてるのかしら」

私は自分でもわかるくらい挙動不審になりながら、
自分のベッドに潜り込んだ。

「い、痛!眼鏡が・・・」
「あはは。やっぱり変ですよ、亜希子さん」
「・・・」

私は布団の中で眼鏡を外して、手探りでベッドの横の棚に置いた。

「あ、お風呂、行きます?」
「お風呂!?無理!」

お風呂は共用の大浴場だ。
今は、誰かの裸なんて見れない!

「は?」
「ううん!明日の朝、入る!」
「そうですか?わかりました、じゃあ私だけお風呂に行ってきますね」
「うん!おやすみ!」

私が布団の中から叫ぶと、春美ちゃんは
「変な亜希子さんー」と笑いながら、部屋を出て行った。
 
 
 
  
 
 
 
 
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