第2部 第7話
 
 
 
ノエルパパ&ナツミパパ

「では月島さんは、あのおもちゃショーを主催しているドリームトイの方なんですか?」
「開発部門なのでコンペのことはさっぱりですが・・・すみません、お力になれず」
「とんでもない。先日は突然コンペを辞退して申し訳ありませんでした。あ、酒をどうぞ」
「ありがとうございます。・・・いえ、あれは寺脇建設さんも被害者ですからね。
そうだ、実はあのおもちゃショー、海外でも開催することになったんです。
それで海外での建設関係のコンペをもう一度行うことに」

云々かんぬん。


ノエルママ&ナツミママ

「お姉様はT大でノエル君は海光・・・理想的なご姉弟ですね、羨ましい。
うちの姉妹に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいです」
「いえ、2人とも頭でっかちで。ノエルの進路が決まらずハラハラしてたんですけど、
お陰様で落ち着きそうです」
「ノエル君とナツミがアメリカに行ったら、私達も遊びに行きませんこと?ついでにハワイも・・・」

云々かんぬん。


で、
ノエル姉&ナツミ妹

「和歌さん!」
「は、はい」
「私、和歌さんみたいなお姉さんが欲しかったんです」
「マユミちゃんには、ナツミちゃんっていうお姉さんがいるじゃない」
「和歌さんみたいな!お姉さんが欲しかったんです」
「・・・」



パパと本物の月島ノエルとの対面から1ヶ月、
(なんだかんだでノエルさんは毎週日曜にうちに来てたけど)
今日はうちで、月島家と寺脇家の顔合わせが行われている。

このことからも分かるように、ノエルさんとお姉ちゃんの結婚話はスムーズにまとまった。
というのも、月島家の人たちが突然の結婚話にも関わらず、
ノエルさんを養子に出すことにもアメリカへ行かせることにも、喜んで賛成してくれたからだ。

今後の予定としては、
ノエルさんが海光を卒業するのを待って2人は結婚し、
来年の4月からノエルさんはアメリカへ行く。
ただお姉ちゃんは、高校を辞めてついていくか、1年離れて暮らすか、まだ悩んでいるようだ。
だけどまあ、1ヶ月の修学旅行でも「耐えられない!」と言っていたお姉ちゃんだ。
ついていくことになるだろう。

でも、とにかく2人が結婚することは決まった。
それで今日こうして両家族が対面している訳だけど、
これも予想以上にスムーズだ。

なんとノエルさんのお父さんは、例のおもちゃショーを主催している会社の人で、
パパとその話で盛り上がってるし、ママsはすっかり主婦友だ。

そして、私はと言えば・・・

「あのノエルさんに、こんな素敵なお姉様がいるなんて!」

嫌味な姉弟だなんて言ったのはどこのどいつだ。

「私も、可愛い妹が2人もできて嬉しいわ」
「和歌さん・・・」

感激だ。

和歌さんは、私が想像する「理想のお姉様」そのものだった。
知的美人で落ち着いていて大人っぽくて・・・
ママじゃないけど、お姉ちゃんに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


とにかく、パパs・ママs・シスターズは和気藹々と、会話を楽しんでいる。

が。

楽しんでいないのが1組いる。

私はチラッと後ろを振り向いた。
そこには、向かい合ってソファに座り、火花を散らしている2人が。

ノエルさんとお姉ちゃんだ。

「絶対イヤだ」
「いくらノエル君でも、これだけは譲れないの!」
「ダメ」
「お願い・・・」
「ムリ」

私が前に向き直ると、私と同じくお姉ちゃんたちを見ていた和歌さんと目が合った。
2人して肩をすくめ「困ったね」という顔をする。

これだけお互いの家族が仲良くなっているというのに、
当の本人達がこれ以上ない程険悪な雰囲気だ。

原因は・・・

「ウエディングドレスだけは絶対に着たいの!」
「1人で着れば?」
「ノエル君もタキシード、一緒に着ようよ・・・」
「死んでも嫌だ」
「・・・じゃあ、結婚式でノエル君は何着るの?」
「結婚式なんて、するの?」
「・・・」

お姉ちゃんが勢い良く泣き出して、パパに抱きつく。

「パパ〜!ノ、ノエル君があ〜!結婚式しないって言うの!!」
「ん?ああ、したくないならしなくていいんじゃないか?二人とも学生なんだし」
「パパ!」
「それに、するとなると大々的になるぞ?
寺脇コンツェルンの持ってる会社の重役連中は全員呼ばんといかんしな。
それに、世話になってる会社の社長なんかも」

ノエルさんが真っ青になる。

「い、嫌です!そんなの!恥ずかしすぎます!」
「何言ってるのよ、ノエル君。ノエル君はいずれその人達をまとめていかなきゃいけないのよ?」
「タキシードっていうのが嫌なんだ!」
「パパ〜」
「4月までに大規模な結婚式と披露宴の準備をするのは、無理だ。
ノエル君は渡米準備があるしな。取りあえず入籍だけでいいじゃないか。
ノエル君を跡取りとしてお披露目するのは別の機会にしよう。アメリカから戻った時がいいかな」

ノエルさんは「そうしましょう、そうしましょう」と大きく頷き、
お姉ちゃんは「パパ、酷い!」と言ってパパから離れる。

ところが思わぬ人がお姉ちゃんの援護をした。

「ノエル。タキシードくらい着てあげなさい。
お前だって、ナツミちゃんのウエディングドレス姿、見たいだろ?
2人だけででも、式を挙げたらいいじゃないか」
「さすがノエル君のパパです!」

お姉ちゃん。
ノエルさんと喧嘩中に、その褒め方は訳わかんないわよ。

更に、私はどうでもいいんだけど、
優しい和歌さんがお姉ちゃんを助ける。

「そうよ、ノエル。ナツミちゃんがこんなにウエディングドレスを着たがってるのに、
男としてちょっと甲斐性が無さ過ぎるわよ?」
「うるさい、和歌。・・・でも、そうだな。和歌の男は甲斐性ありそうだもんな。女に対しては」
「・・・」

和歌さんが急に貝のように押し黙る。
女に対して甲斐性があるって・・・

「それって、凄く頼れる男の人ってことじゃないですか!いいなー!」
「・・・マユミちゃん。ちょっと意味を取り違えてるわよ」
「?」


結局、ノエルさんとお姉ちゃんが喧嘩したまま、
両家の顔合わせは無事お開きとなったのだった。
 
 
 
  
 
 
 
 
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